一口健康メモ <2024年夏>
―着実に進歩する心臓・血管系疾患の診断と治療―
現在、心臓を巡る治療や診断において患者さんにできるだけ負担をかけないで、なおかつより高度なレベル診療が可能な技術が広まっています。これらの知識を簡単に振り返ってみたいと思います。
まず心臓超音波検査技術の進歩が挙げられます。従来の心臓の形態の解析を目指した検査から、心臓の機能を評価する検査にその手段が広がっています。当院でも心臓機能を評価するティッシュドップラー法、スペックルトラッキング法を活用し、患者さんの心臓の状態を機能面から評価する取り組みを行っています。
その他の新しい心臓検査としまして、外来通院中に実施できる「造影CT検査」の普及があげられます。大動脈や四肢や頭部・頸部の血管の狭窄が疑われた場合の精密検査、心臓中に栄養補給している冠動脈が狭窄して起こる狭心症、心筋梗塞などが疑われた場合の冠動脈の病変発見などに、それぞれの血管に対する「造影CT検査」が実施されます。この検査には少量ですが造影剤使用が必要ですのでその使用がだめな方など利用できない方もおられますが、従来は多くの方は入院の上で手足の血管からカテーテルを挿入して行う選択的血管造影検査が一般的でしたが、外来で負担少なくそれぞれの血管の様子を知ることできる「造影CT検査」は優れた検査方法です。なお当院では実施できない検査部位もあります。
カテーテル治療がよりその役割を広げています。従来は大規模な手術を必要とした心臓・血管系の病気の治療でカテーテル治療が広く選択されるようになっています。なお短期間ですが入院をやはり要することとなります。
普及している代表が不整脈のカテーテル治療(カテーテルアブレーション)です。精密な心電図検査で心臓内の不整脈発生部位を発見決定し特殊なカテーテルでその原因部位を破壊する方法です。年齢とともに増加する心房細動などの不整脈の治療にも優れた成績を示しています。
大動脈(特に破裂すると短時間で生命にかかわる大動脈瘤などに)、四肢、頭部や頚部の血管動脈瘤に対して行われるカテーテルを利用したステント治療も近年広く行われていて既にお聞きなられた方もおられるでしょう。さらに従来は心臓手術の代表的対象であった心臓弁膜症にもカテーテルによる治療が試みられつつあります。大動脈弁への人工弁の植え込みをカテーテルによって行う方法(TAVI)、僧帽弁の狭窄症を緊急的にカテーテルについたバルーンで広げる方法、さらには弁の閉鎖が十分でなくなってきた僧帽弁閉鎖不全をカテーテルで僧帽弁の形を整えるカテーテル形成術治療も近年行われるようになっています。
さらに大阪地区をそのスタートとする心不全に対する新しい取り組みを二つほど上げたいと思います。第一は機能の低下した心臓に幹細胞由来の心筋細胞で作られた心筋シートを心臓表面に移植することにより心臓機能を改善する方法です。大阪大学病院を中心に実施されています。その治療により心機能改善がみられた患者さんがすでに何例も報告されています。マスコミの話題になることもありご存知の方もおられるでしょう。第二として人工心臓の小型化があげられます。これも。大阪大学病院を中心に実施されています。心臓内部にスクリュータイプのポンプを挿入して人工的に血流を増加させるものです。装置が大幅に小型化され長期間の使用が可能で、すでに医療装置として製品化されその恩恵に浴しておられる方も多くなってきています(心蔵が永遠に止まらず働く、笑)。
以上述べればきりがありません。当クリニックでは以上の最新診療手段を導入している医療機関と連携して皆様方に必要時に提供する機会を得られるように取り組んでいます。
大塚山会オノクリニック 淡田修久